労働基準法における残業の定義
日本で一般的に「残業」と呼ばれるものは、単に「遅くまで働くこと」を意味するのではなく、法定労働時間を超えた労働を指す用語です。
労働基準法では、1日8時間、週40時間を法定労働時間として定め、さらに週1日以上の休日を与えなければならないと規定しています(労働基準法第32条、第35条)。したがって、この基準を超えて行われる労働が「残業」あるいは「時間外労働」となります。
つまり、法定労働時間を超えてはじめて「残業」と認められる仕組みです。例えば、会社の規定で1日の所定労働時間が7時間と定められている場合、1時間余分に働いても、法定労働時間である8時間には達していないため、法律上の「残業」には当たりません。これはあくまで会社の規定時間を超えただけであり、法的な意味での残業とは区別されます。
整理すると以下のとおりです。
・所定労働時間: 会社との労働契約で定められた勤務時間(例: 1日7時間など)
・法定労働時間: 法律で定められた勤務時間(1日8時間、週40時間)
・法定休日: 法律で保障された週1日以上の休日
・残業: 法定労働時間を超えた労働
したがって、会社の所定時間を超えて働くことと、法律上の残業とは区別して理解する必要があります。また、労働者は最低でも週1日以上の休日が保障されなければならない点も重要です。
労働基準法における残業の上限規制
日本の労働基準法では、残業(時間外労働)の上限が厳しく規定されています。原則として、時間外労働は月45時間・年360時間を超えることはできません。これは労働者の健康を守るための基本的な上限であり、これを超える労働は原則禁止されています。
しかし、業務が集中する時期や特別な事情がある場合には、労使間の合意によって例外的に上限を超えることが可能です。その仕組みが、36協定(サブロク協定)に含まれる「特別条項付き協定」です。この特別条項を締結し、労働基準監督署に届け出た場合に限り、一時的に月45時間を超える残業が認められます。
ただし、この場合でも無制限に認められるわけではなく、次のような追加的な上限制限が適用されます。
・年間残業時間: 720時間以内
・1か月の残業時間: 100時間未満(休日労働を含む)
・2〜6か月の平均残業時間: 80時間以下(休日労働を含む)
つまり、基本的には月45時間・年360時間という制限が存在し、特別な合意と事情がある場合にのみ例外的に超過が認められます。この制度は、日本社会で深刻な問題とされてきた過労死を防ぐため、2019年の働き方改革関連法によって強化された規制でもあります。
残業代の計算と割増率
●残業代の計算方法
残業をした場合、会社は労働者に対して基本給に加え、最低25%の割増賃金を支払う義務があります。これは労働基準法で定められた、時間外労働に対する補償規定です。
計算式:
= 時給 × 残業時間数 × 割増率
例) 時給1,500円の労働者が2時間残業した場合:
= 1,500円 × 2時間 × 1.25 = 3,750円
したがって、労働者は基本給に加えて残業代3,750円を受け取ることになります。
●条件別の割増率
残業以外にも、条件によってさらに高い割増率が適用されます。
・深夜労働(22時~翌5時):基本給に25%を加算。
深夜に残業が行われた場合は、残業割増25%と深夜割増25%が合算され、50%の割増となります。
・法定休日労働(週1日以上の休日):基本給の35%以上を加算。
休日かつ深夜に労働した場合は、それぞれの割増率が重複して適用され、さらに高い賃金が支払われます。
・月60時間を超える残業:2023年4月から中小企業にも適用され、超過分については50%の割増が必要です。さらに深夜と重なる場合は25%が追加され、75%の割増となります。
●法的手続きと制限
・36協定(サブロク協定)の締結
割増賃金を支払えば合法になるわけではなく、原則として労使間で36協定を締結し、労働基準監督署に届け出て初めて時間外・休日労働を命じることができます。
・未成年労働者の保護
18歳未満の労働者に対しては、時間外労働・休日労働・深夜労働をさせることは原則として禁止されています。
外国人の私が実際に体験した日本の会社の現実
私は韓国人として大阪で約10年間会社勤めをし、その間に4つの会社を経験しました。ここで述べることはあくまで私個人の経験であり、日本のすべての会社の状況を代表するものではなく、きわめて個人的で主観的な内容であることをあらかじめご了承ください。また、自分の経験だけでなく、周囲の知人の話も参考にしています。
1. 本当に必要な残業なのか?
残業が本当に必要であればすべきだと私は思います。しかし、残業が当たり前の会社で働いた経験から、時には「本当に必要な残業なのか」と疑問に思うことがありました。定時で帰れるのに会社の雰囲気に流されて残っているだけではないか、本当に今やるべき仕事なのか、明日でもできるのではないか、あるいは勤務時間中に集中できなかった結果ではないかと考えさせられました。原因は会社にあるかもしれませんし、個人にもあるかもしれないと思います。
2. 残業代のための残業
少数派だとは思いますが、実際に残業代を得るためにあえて残業をしている人を見たことがあります。もちろん個人の自由ですし、会社が許容しているのであれば悪いことだとは言えません。しかし、個人の時間の価値や会社の生産性・効率性を考えると、必ずしも肯定的には受け止められませんでした。
3. そもそも与えられた業務量は適切か?
会社側が給与を支払い、それに見合う業務を求めるのは当然だと思います。ただし、人それぞれ能力や適性は異なるため、そもそも定められた勤務時間内でこなせる業務量が与えられていたのかどうかも確認する必要があると思います。
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