
✨星評価 — 本の難易度ガイド
★☆☆ 一つ星: 読みやすく、理解しやすい
★★☆ 二つ星: 一部専門用語を含む中級レベル
★★★ 三つ星: 複雑なアイデアや専門用語が多い上級レベル
本書について
■タイトル:アメリカの高校生が学んでいるお金の教科書
■著者:アンドリュー・O・スミス
■出版社:SBクリエイティブ
金融教育の先進国といわれるアメリカでは、高校生が学校の授業でお金や金融について学んでいます。貯金や予算管理、信用や投資といった知識を若いうちから身につけることが、将来の人生設計にとって大きな財産になるからです。
本書「アメリカの高校生が学んでいるお金の教科書」は、まさにそのアメリカの金融教育をもとに書かれた一冊です。原題は Financial Literacy for Millennials: A Practical Guide to Managing Your Financial Life for Teens, College Students, and Young Adults で、10代や大学生、若い世代に向けた実践的な金融生活のガイドブックです。
内容の要約
この本は、単なる「お金の使い方」を教える本ではなく、人生を通して誰もが身につけるべき金融の基本原則をまとめた一冊です。お金の計画をどう立てるか、キャリアをどう設計するか、貯金や銀行の使い方、予算や支出の管理といった日常的に必要な知識をやさしく解説しています。
さらに、クレジットカードや借金、破産といったリスク、投資の始め方や金融詐欺から身を守る方法、保険や税金、社会福祉制度、法律や契約、そして老後の資産形成まで、誰もが人生で直面する重要なテーマを幅広く網羅しています。
そして最大の魅力は、これほど大切な内容を高校生でも理解できるほどやさしく、丁寧に書かれている点です。金融に不慣れな若い世代にとってはもちろん、これまでお金の勉強をしてこなかった大人にとっても、長く役立つ金融リテラシー入門書となるでしょう。
印象に残った言葉
■絶対に覚えておきたいお金のヒント10のうち5つ
1.シンプルに:お金の管理はシンプルがいちばんだ。
2.質素に暮らす:お金は無限にあるわけではない。
7.すべてのものには税金がかかる:税金を引いた額で考えること。
8.長期で考える:人生100年時代に備える。
9.自分を知る:万人に適した方法は存在しない。
読後の感想
私も大人になって自分でお金を稼ぎ、生活するようになってから、お金の大切さと管理の重要性を強く実感するようになりました。特に韓国人として日本で生活しているため、日本の金融制度について詳しく知らなかったこともあり、自己学習の一環としてFP(ファイナンシャル・プランナー)2級の資格を取得しました。FPは日本の金融資格で、社会保険や税金、相続、不動産、年金など、人生全般で必要となる金融知識を幅広く学べるため、興味のある方はまず3級から学んでみることをおすすめします。
そうした背景もあって手に取った『アメリカの高校生が学んでいるお金の教科書』は、タイトルだけでも十分に興味をひかれました。実際の内容も、高校生や社会に出たばかりの若者、あるいは金融知識が少ない大人でも無理なく理解できるようにわかりやすく書かれていました。
多くの部分に共感しましたが、一方で物足りなさも感じました。本書はアメリカの金融制度を前提にしているため、日本の読者がそのまま実生活に応用するには難しい部分もあるからです。たとえば著者は「複利効果を得るために貯金せよ」と述べていますが、日本では最近ようやくマイナス金利を脱したものの、依然として預金金利はゼロに近く、複利の恩恵を実感するのは難しい状況です。むしろインフレによって現金の価値が下がってしまうリスクさえあります。
それでも、国ごとの制度的な違いを除けば、本書はお金の基本的な性質や必ず身につけておきたい知識を、簡潔でありながら充実した内容で紹介している優れた入門書です。アメリカの金融を知りたい方や、一冊で人生の金融基礎を学びたい方におすすめできる本だと思います。
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